過労死ライン超の残業 厚木市立病院是正勧告

東京新聞より2017610

 

労使協定(三六協定)で定めた上限を超す残業をさせたとして、厚木市立病院が三月、厚木労働基準監督署から是正勧告を受けたことが分かった。病院が九日、記者会見して明らかにした。

 病院によると、事務職員十七人のうち、十三人が昨年十月~今年一月、協定で定めた一カ月当たり四十五時間を超す残業をし、このうち二人が過労死ラインとされる八十時間を超えていた。一カ月当たり最も多い残業は、福利厚生を担当する副主幹の四十代女性で、百二十五時間だった。

 病院によると、予算・決算期を含む繁忙期や、市民の生命を守るためなど六項目の特別な事情があれば、一カ月で一人三百時間まで残業できると労使で定め、労基署に届けている。

 労基署側は「残業理由の記入があいまいで、特別な事情かどうかを判断できない」と指摘。病院側は「建設工事に伴う業務の増加など特別な事情」としつつも、残業理由の記入方法など改善点を労基署に報告する。

 病院側はまた、労基署から改善を求められた他の四点も踏まえ、毎週水曜日のノー残業デーは時間外勤務を認めないなど五項目の是正措置を講じたと説明。五月の一人当たりの平均時間外勤務は昨年十月~今年一月の月平均と比べ、十八時間少なくなったという。

 厚生労働省によると、全国の労基署が官公署へ行った監督指導は、二〇一五年の集計で三十二件あった。 (井上靖史)

組合学習会「日赤、月200時間残業協定 渋谷のセンター 過労死基準2倍」

東京新聞より2018114日 朝刊

 

日赤医療センター(東京都渋谷区)が医師の残業時間を「過労死ライン」の二倍に当たる月二百時間まで容認する労使協定(三六協定)を結んでいることが十三日、分かった。医師二十人は二〇一五年九月からの一年間で月二百時間の上限を超えて残業。渋谷労働基準監督署は昨年三月、センターに協定を順守するよう是正勧告した。

 政府は働き方改革の一環として次期通常国会に、残業時間を罰則付きで規制する法案を提出する方針だが、医師への適用は五年間猶予される。適用の前倒しを巡る議論も必要となりそうだ。

 労災の過労死が認められる目安は月百時間の残業とされているが、現行では労使間合意があれば残業時間の上限に制限はない。

 日赤医療センターは日本初の赤十字病院で常勤医師約二百六十人、約七百床の大型総合病院。月二百時間の上限を過重だったと認め、協定を見直すとしている。非常勤を含めた医師の補充や近隣医療機関との連携で「まずは全医師の残業月百時間以内を目指す」と説明している。

 労使協定では、特段の事情が発生した場合に限り時間外労働を「一カ月二百時間(年六回まで)、年間二千時間」まで延長できると規定。ただ、センターによると、二百時間超えも頻繁に発生し、一五年九月からの一年間で四回超えた医師が二人、二回が三人、一回が十五人いた。昨年一月以降も、毎月四十~五十人の医師が百~百五十時間の残業をしている。残業が多いのは外科や小児科、救急科だった。厚生労働省は「医師の働き方」に関する検討会を設置している。病院の労使協定を巡っては、国立循環器病研究センター(大阪府)が残業月三百時間を可能にする協定を結んでいたことが昨年九月、明らかになっている。

過酷な労働実態を反映

 勤務医の過労死問題に詳しい松丸正弁護士の話 月二百時間の労使協定は過労死ラインの二倍で異常だが、救急医療に携わる勤務医の過酷な労働実態と懸け離れたものではない。現実を見ながらやむを得ず結んだ協定だろう。行政も日本医師会自身も長時間労働の議論を十分にしなかった結果、勤務医の残業を減らせば、医療が崩壊するという二律背反の状況が生まれている。勤務医の過労は医療の安全にもつながる問題で、早急な解決が必要だ。

<三六協定と過労死ライン> 労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間までと規定するが、同法36条に基づく労使協定(三六協定)を結べば、企業は労働者に時間外労働(残業)を命じることができる。厚生労働省は三六協定の残業を月45時間、年360時間までとの基準を示すが、労使で合意すれば上限はない。厚労省は脳・心臓疾患を労災認定する目安として、発症前1カ月に100時間、または2~6カ月にわたり月80時間超の残業を設定。「過労死ライン」と呼ばれる。

組合学習会「北里大病院 医師勤務時間 定めず 労基法違反で是正勧告」

東京新聞より2018118日 朝刊

 

北里大病院(相模原市)が就業規則に医師の労働時間を定めていなかったなどとして、運営する学校法人「北里研究所」が相模原労働基準監督署から是正勧告や改善指導を受けたことが十七日、同院への取材で分かった。

 同院によると、病院の「勤務時間管理規程」で労働時間を週三十八時間と定めていたが、医師は適用外だった。出退勤時刻はタイムカードで記録していたが、労働安全衛生法で定める健康被害の防止措置は講じていなかった。労働契約締結の際に労働条件を書面で交付していなかった点も、労働基準法違反に当たるなどとして是正勧告を受けた。

 医師以外も、時間外勤務の申請書と実際の出退勤時間が食い違うなどとして、改善を求める指導票が交付された。

 北里大病院は、高度医療を提供する「特定機能病院」で、医師約六百人、看護師約千三百人が勤務している。

 北里研究所の小林弘祐(ひろすけ)理事長は「是正勧告を真摯(しんし)に受け止め、医師の勤務時間を適正に管理する」とコメントしている。

 医師の長時間労働を巡っては、日赤医療センター(東京都渋谷区)が医師の残業時間を「過労死ライン」の二倍に当たる月二百時間まで容認する労使協定(三六協定)を結んでいることが明らかになった。

 厚生労働省は医師の働き方改革に関する検討会で、診療の求めを原則拒めないと医師法が規定する「応召義務」の在り方などの議論を進めている。

組合学習会「違反12件、市立病院に是正勧告 小田原労基署」

神奈川新聞より1/30() 6:43配信

 

神奈川県小田原市は29日、市立病院で労働基準法違反や労働安全衛生法違反が12件あり、小田原労働基準監督署から是正勧告を受けた、と発表した。医療技術部門での宿日直勤務の実態が通常勤務に該当するとして、薬剤師や技師32人に対し、時間外勤務手当と宿日直手当との差額分を支給するなど改善する。
 市病院管理局経営管理課によると、薬剤、放射線、病理診断・臨床検査の3科では通常勤務後、午後5時15分から翌午前8時半まで、宿日直勤務を実施。だが、特に救命救急センターを開設した2009年以降、調剤や検査など厚生労働省が定める宿日直勤務の基準を超える多忙さになったと考えられるという。
 昨年5月23日に同労基署による立ち入り調査を受け、同30日付で勧告を受けた。市は15、16年度で計約3950万円を支給するため、17年度補正予算案に計上、市議会3月定例会に提出する。
 そのほか、病理診断・臨床検査科に有機溶剤作業主任者と特定化学物質作業主任者を選任していなかったり、雇用期間のある臨時職員と労働契約を締結する際、更新の基準に関する事項を書面で明示していなかったりしたという。

組合学習会から「夜勤中等の仮眠時間は労働時間に該当するのか?」

大星ビル管理事件

最一小判平14.2.28 民集56-2-361

最高裁判例の全文より

キーワード:不活動仮眠時間

 

判示事項

1 実作業に従事していない仮眠時間と労働基準法上の労働時間

2 ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている連続7時間ないし9時間の仮眠時間が労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例

 

裁判要旨

 1 労働者が実作業に従事していない仮眠時間であっても,労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には,労働からの解放が保障されているとはいえず,労働者は使用者の指揮命令下に置かれているものであって,労働基準法32条の労働時間に当たる。

2 ビル管理会社の従業員が従事する泊り勤務の間に設定されている連続7時間ないし9時間の仮眠時間は,従業員が労働契約に基づき仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられており,そのような対応をすることが皆無に等しいなど実質的に上記義務付けがされていないと認めることができるような事情も存しないなど判示の事実関係の下においては,実作業に従事していない時間も含め全体として従業員が使用者の指揮命令下に置かれているものであり,労働基準法32条の労働時間に当たる。

組合学習会から「更衣時間は労働時間?制服に着替える時間は労働時間でしょうか?」

三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・会社側上告)事件

最一小判平12.3.9 民集54-3-801

最高裁判例の全文より

判示事項

一 労働基準法上の労働時間の意義

二 労働者が就業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ又はこれを余儀なくされた場合における当該行為に要した時間と労働基準法上の労働時間

三 労働者が始業時刻前及び終業時刻後の作業服及び保護具等の着脱等並びに始業時刻前の副資材等の受出し及び散水に要した時間が労働基準法上の労働時間に該当するとされた事例

 

裁判要旨

一 労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則労働協約等の定めのいかんにより決定されるものではない

二 労働者が、終業を命じられた業務の準備行為等を事業所内において行うことを使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされたときは、当該行為は、特段の事情のない限り、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、当該行為に要した時間は、それが社会通念上必要と認められるものである限り、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当する。

三 就業規則により、始業に間に合うよう更衣等を完了して作業場に到着し、所定の始業時刻に作業場において実作業を開始し、所定の終業時刻に実作業を終了し、終業後に更衣等を行うものと定め、また、始終業の勤怠は更衣を済ませ始業時に準備体操場にいるか否か、終業時に作業場にいるか否かを基準として判断する旨定めていた造船所において、労働者が、始業時刻前に更衣所等において作業服及び保護具等を装着して準備体操場まで移動し、副資材等の受出しをし、散水を行い、終業時刻後に作業場等から更衣所等まで移動して作業服及び保護具等の脱離等を行った場合、右労働者が、使用者から、実作業に当たり、作業服及び保護具等の装着を義務付けられ、右装着を事業所内の所定の更衣所等において行うものとされ、副資材等の受出し及び散水を始業時刻前に行うことを義務付けられていたなど判示の事実関係の下においては、右装着及び準備体操場までの移動、右副資材等の受出し及び散水並びに右更衣所等までの移動及び脱離等は、使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができ、労働者が右各行為に要した社会通念上必要と認められる時間は、労働基準法(昭和六二年法律第九九号による改正前のもの)三二条の労働時間に該当する。

組合学習会から 「宿直仮眠中の賃金未払い1.5億円 大阪市が支払いへ」

労働関連NEWSを読み解く今月の組合学習会から

宿直仮眠中の賃金未払い1.5億円 大阪市が支払いへ

 

2016416朝日新聞デジタルより引用

 

大阪市は25日、非常勤の宿直職員の仮眠時間を労働時間に算入していなかったとして、過去2年間分の賃金約1億5千万円を市内24区役所の担当職員に支払うと発表した。3月に労働基準監督署から是正勧告があり、市が調査していた。

 市によると支払い漏れで勧告を受けたのは、夜間と休日に区役所の建物をパトロールし、戸籍の届け出などを受ける非常勤の「宿日直(しゅくにっちょく)専門員」の賃金。24区役所に計約100人おり、2人一組の勤務で午前0時~6時の間に約3時間ずつ仮眠をとるが、電話や来庁者に対応していたという。

 未払い賃金の請求権の有効期限が2年のため、市は今年3月までの2年分を支給。社会保険料約2400万円も追加で支出する。

 仮眠を労働時間に入れると、専門員の賃金が大阪府最低賃金(1時間858円)に届かない計算になるため、福島区役所を調査していた西野田労基署が最低賃金法違反などになるとして是正勧告していた。