組合学習会「日赤、月200時間残業協定 渋谷のセンター 過労死基準2倍」

東京新聞より2018114日 朝刊

 

日赤医療センター(東京都渋谷区)が医師の残業時間を「過労死ライン」の二倍に当たる月二百時間まで容認する労使協定(三六協定)を結んでいることが十三日、分かった。医師二十人は二〇一五年九月からの一年間で月二百時間の上限を超えて残業。渋谷労働基準監督署は昨年三月、センターに協定を順守するよう是正勧告した。

 政府は働き方改革の一環として次期通常国会に、残業時間を罰則付きで規制する法案を提出する方針だが、医師への適用は五年間猶予される。適用の前倒しを巡る議論も必要となりそうだ。

 労災の過労死が認められる目安は月百時間の残業とされているが、現行では労使間合意があれば残業時間の上限に制限はない。

 日赤医療センターは日本初の赤十字病院で常勤医師約二百六十人、約七百床の大型総合病院。月二百時間の上限を過重だったと認め、協定を見直すとしている。非常勤を含めた医師の補充や近隣医療機関との連携で「まずは全医師の残業月百時間以内を目指す」と説明している。

 労使協定では、特段の事情が発生した場合に限り時間外労働を「一カ月二百時間(年六回まで)、年間二千時間」まで延長できると規定。ただ、センターによると、二百時間超えも頻繁に発生し、一五年九月からの一年間で四回超えた医師が二人、二回が三人、一回が十五人いた。昨年一月以降も、毎月四十~五十人の医師が百~百五十時間の残業をしている。残業が多いのは外科や小児科、救急科だった。厚生労働省は「医師の働き方」に関する検討会を設置している。病院の労使協定を巡っては、国立循環器病研究センター(大阪府)が残業月三百時間を可能にする協定を結んでいたことが昨年九月、明らかになっている。

過酷な労働実態を反映

 勤務医の過労死問題に詳しい松丸正弁護士の話 月二百時間の労使協定は過労死ラインの二倍で異常だが、救急医療に携わる勤務医の過酷な労働実態と懸け離れたものではない。現実を見ながらやむを得ず結んだ協定だろう。行政も日本医師会自身も長時間労働の議論を十分にしなかった結果、勤務医の残業を減らせば、医療が崩壊するという二律背反の状況が生まれている。勤務医の過労は医療の安全にもつながる問題で、早急な解決が必要だ。

<三六協定と過労死ライン> 労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間までと規定するが、同法36条に基づく労使協定(三六協定)を結べば、企業は労働者に時間外労働(残業)を命じることができる。厚生労働省は三六協定の残業を月45時間、年360時間までとの基準を示すが、労使で合意すれば上限はない。厚労省は脳・心臓疾患を労災認定する目安として、発症前1カ月に100時間、または2~6カ月にわたり月80時間超の残業を設定。「過労死ライン」と呼ばれる。